外壁塗装の前にチェック!塗料の種類や特徴、価格を比較・解説
外壁塗装・外壁リフォームを行う際に気になるのが、塗料の種類や違い、それぞれの特徴ではないでしょうか。
塗料はさまざまな種類があり、変わるのは見た目だけではありません。
素材によって機能や耐用年数、価格も大きく異なります。
外壁塗装は5〜15年に1度の大きなイベントです。
塗料選びも今後の家のメンテナンスに関わってくるため、慎重に選びましょう。
この記事では、塗料の種類ごとに特徴や費用、耐用年数などを解説します。
塗料が変わると何が違う?
外壁塗装は見た目をきれいにするだけでなく、建物を保護する大切な役割りがあります。
建物は毎日紫外線や雨にさらされることで、塗膜は日々劣化しています。
そのため定期的に外壁塗装を行うことで塗膜を補い(取り替えて)防水し、寿命を伸ばす必要があるのです。
外壁塗装を行わずに放置していると、次第に雨漏りを引き起こしたり下地の柱を腐らせてしまうなど建物の破損・損壊につながる可能性があります。
そして、ここで重要となるのが塗料の種類です。
塗料はアクリル、ウレタン、シリコン、フッ素などさまざまな種類があり、それぞれの持つ特徴が違います。
価格や塗装後の見た目も変わってくるため、目的や求める機能、予算に応じて適した塗料を選ぶことが重要です。
塗装業者に相談すれば調査・ヒアリングなどをもとに塗料の提案・見積もりを出してもらえますが、自身でもおおよその知識を持っておくと、悪徳業者を見分けることにも役立つでしょう。
塗料に含まれる成分
塗料の種類の前に、まずは塗料に含まれている成分について解説します。
外壁塗装で使われる塗料は、①合成樹脂、②添加剤、③顔料、④溶剤類、の4つの成分で構成されています。
このうち①〜③が乾燥すると塗膜となる「メイン要素」、④は蒸発してなくなってしまう「サブ要素」です。
これらの成分はそれぞれに違う役割りを持っており、成分の品質レベルや成分含有の有無で塗料の種類が決められます。
例えば、合成樹脂の品質レベル(=グレード)は主にアクリル・ウレタン・シリコン・フッ素などの種類に分かれ、これが耐久性を決める主成分となるのです。
また、着色効果のある顔料の有無はエナメル・クリヤー、ツヤ消し剤を調整することでツヤ有り・ツヤ消しの仕上がりを実現します。
それぞれの役割りと主な例をまとめると以下の表となります。
塗料の成分 | 役割り | 例 |
合成樹脂 | 耐久性を決める主成分 | アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素など |
添加剤 | 塗膜に機能を追加する | 1液型/2液型、硬質/弾性、ツヤ有り・ツヤ無しなど |
顔料 | 塗膜に色を加える | エナメル・クリヤーなど |
水・溶剤 | 塗料を液体化させる | 水性/油性など |
特に合成樹脂は塗料選びの際の最重要ポイントで塗料の耐用年数・グレードを大きく左右します。
合成樹脂は上の表の例で挙げているように主に4種類あり、アクリル<ウレタン<シリコン<フッ素の順で耐久性が高くなりますが価格も比率して上がります。
また、シリコンなどの合成樹脂と特有の成分を混合して作られる「ハイブリッド塗料」もあります。
「ラジカル塗料」や「セラミック塗料」などはこのタイプです。
合成樹脂はそれぞれ「水性」と「油性」があり、さらに「1液型」と「2液型」に分けられます。
そのため、アクリルの合成樹脂だけでも4パターンの塗料があるということです。
しかし、外壁塗装を行う上で選択する必要があるのが「合成樹脂」「水性/油性」「ツヤ有り/無し」などの項目となります。
外壁塗装に使われる塗料の種類・価格・耐用年数
ここでは外壁塗装に使われる一般的な塗料と特殊塗料の種類、それぞれの特徴や価格、耐用年数についてわかりやすく比較、解説します。
ただしこれらの耐用年数や価格は目安です。気象条件や塗料メーカーなどによって異なります。
(※表は横にスクロールできます。スマホを横表示にすると表が見やすくなります)
塗料の種類 | 特徴 | 耐用年数 (目安) |
価格帯 (目安) |
アクリル系塗料 | ・他の塗料に比べて安価 ・カラーバリエーションが豊富 ・軽量で重ね塗りしやすい ・塗膜の劣化が早くこまめなメンテナンスが必要 |
3〜8年 | 1,200〜 1,800円/㎡ |
ウレタン系塗料 | ・剥がれにくく硬度がある ・さまざまな壁材との相性が良い ・光沢があり高級感が出せる ・紫外線に弱い(変色しやすい) |
8〜10年 | 1,800〜 2,400円/㎡ |
シリコン系塗料 | ・近年の外壁塗装の主流 ・耐久性・耐水性・費用などのバランスが良い ・長期的に見るとコスパが良い ・透湿性が高く結露が発生しにくい |
10〜15年 | 2,000〜 2,800円/㎡ |
フッ素塗料 | ・耐熱・耐寒性が高い ・酸性雨や紫外線に強い ・汚れが付着しても雨で流れ落ちる ・メンテナンス回数を減らせる ・1回あたりの施工費用が高い |
15〜20年 | 3,200〜 5,000円/㎡ |
ラジカル制御塗料 | ・チョーキング現象を抑えるために開発されている ・防カビと防藻性に優れている ・コストパフォーマンスが良い ・次世代の塗装の主流と期待されている |
12~15年 | 2,200〜 4,000円/㎡ |
光触媒塗料 | ・セルフクリーニング(雨と日光の力で汚れを落とす) ・耐用年数が長い ・空気清浄効果がある ・色のバリエーションが少ない |
15〜20年 | 3,800〜 5,500円/㎡ |
無機塗料 | ・火事でも燃えにくい ・壁の汚れを浮かせて雨水で洗い流す ・耐用年数が長い ・ひび割れしやすい |
20~25年 | 3,500〜 5,500円/㎡ |
セラミック塗料 (遮熱・断熱) |
・掛け合わせる配合樹脂によって機能が異なる ・断熱・遮熱性が高い ・外壁が汚れにくい ・石材調のデザインも実現できる ・費用が高い |
10〜20年 | 2,300円〜 4,500円/㎡ |
ナノテク塗料 | ・防火性が高い ・セルフクリーニング(壁の汚れを雨水で洗い流す) ・防カビと防藻性に優れている ・環境に優しい ・費用が高い |
10〜15年 | 2,400〜 5,500円/㎡ |
アクリル系塗料
アクリル系塗料はアクリル系合成樹脂成分を主原料とする塗料で内壁の塗装によく使用されます。
最大の特徴は価格の安さですが耐久年数が3〜8年と短いため、メンテナンスも頻繁に必要となります。
アクリル系塗料の歴史は長く、1950年ごろから開発・製造が始まり、当時は発色の良い塗料として人気を集めていました。
現在はウレタン樹脂塗料やアクリルシリコン樹脂塗料など次々に高性能な塗料が開発されているため外壁の塗料としての需要は減少傾向にありますが、カラーバリエーションが豊富で安価なためDIY塗料、内壁塗料として多く利用されています。
アクリル系塗料のメリット
・比較的低価格で施工できる
・ツヤと発色が良くカラーバリエーションが豊富
・透湿性があり、塗り替えにおすすめ
・施工が簡単なため失敗しづらい
アクリル系塗料は塗膜に透湿性があり、軒天井など湿気のたまりやすい場所におすすめです。また、耐久性が低いため外壁ではなく頻繁に塗り替えが発生する箇所への施工が良いでしょう。
アクリル系塗料のデメリット
・耐久性が低い
・汚れが付きやすい
・紫外線に弱い
・ひび割れ(クラック)が発生しやすい
アクリル系塗料はウレタンやシリコンの塗料と比較すると耐久性が低いのが特徴です。
外壁や屋根の塗装は足場を組んで大掛かりな施工となるため費用も高額になります。そのため、外壁塗装に利用すると長い目で見たときにメンテナンスの費用も高くなります。
長年住む予定の家の外壁には向かないでしょう。
また、アクリル系塗料は塗膜が硬くひび割れが起こりやすい特徴もありますが、「弾性アクリル塗料」は伸縮性があるためひび割れをある程度防ぐことができます。
ウレタン系塗料
ウレタン系塗料はウレタン系合成樹脂成分を主原料とする塗料です。
価格・耐久性・機能性のバランスが他の塗料よりも良く、外壁塗料の主流とされていました。
ウレタン系塗料は密着性に優れ、複雑な面の塗装にも使いやすい点が特徴です。そのため、木材で作られた外壁にも使えるほかさまざまな箇所で活用できます。
耐用年数は8〜10年と、シリコン系塗料に次いで短いため目先のリフォーム費用を抑えたい、10年以内に引っ越す可能性がある人におすすめです。
ウレタン系塗料のメリット
・付着性に優れている
・樹脂が柔らかいためひび割れが発生しにくい
・ツヤ・光沢がある(高級感が出る)
・細かい場所にも使える
・塗料の種類が多い
・昔から扱われているため対応できる塗装業者が多い
ウレタン系塗料は塗膜に弾力性があるため施工しやすく、剥がれにくいのが特徴です。また外壁のひび割れを防ぎ木部・塩ビ製の雨樋などへの塗装にも向いています。
ウレタン系塗料のデメリット
・紫外線の影響を受けやすい(変色しやすい)
・湿度が高いと性能が落ちる
・シリコン塗装に比べ防汚性・耐性が劣る
ウレタン系塗料は紫外線の影響を受けやすいため、製品によっては切り口の白い部分が紫外線により黄色く変色してしまうことがあります。
また、外壁材に断熱材が入っている場合は外壁と塗膜の間に熱がこもり、熱によって塗膜が膨らむと剥がれやすくなります。他にも、サビや手垢などの異物が混入して空気が入るなど、ウレタン系塗料は塗膜が膨らむリスクも念頭に入れておきましょう。
シリコン系塗料
シリコン系塗料はシリコン系・アクリルシリコン系の合成樹脂を主成分とする塗料です。
シリコン系塗料は機能・耐久性・価格のバランスが良い点が特徴で外壁と屋根によく利用されています。
また汚れにくく気温差や雨風にも強い、アクリルやウレタンよりも耐久年数が長いことから近年の外壁塗料の主流となっています。
シリコン系塗料はすべての面においてバランスが良いことから、「迷ったらシリコン系塗料を選べば間違いはない」と言われるほどです。
シリコン系塗料のメリット
・汚れに強く耐久力が高い
・光沢・ツヤがある
・耐水性・耐熱性が高い
・紫外線に強い
・断熱・遮熱性が高い
シリコン塗料は透湿性が優れている(湿気を通しやすい)ことから、塗装膜が剥がれにくく、カビや藻が生じにくいことが特徴です。
外壁の内側に発生する結露を防止する効果もあり、結露対策として外壁をシリコン塗料でリフォームするケースも多くあります。
また、シリコン系塗料は光沢・ツヤのある仕上がりになるため外壁や屋根は汚れがつきにくく、塗装直後の美しさをキープしやすく、汚れがついても簡単に落とせます。
シリコン系塗料のデメリット
・弾性がやや低いためひび割れしやすい
・重ね塗りには向いていない
シリコン系塗料は密着性がやや弱い傾向があるため、特に重ね塗りが難しく適した下塗り材を用いる必要があります。
そのためひび割れしやすい点や重ね塗りには向いていないと言えるでしょう。
フッ素塗料
フッ素塗料はフッ素系の合成樹脂を主成分とし、天然石が原料になっている塗料です。
ここまでのどの塗料よりも耐久性が高く性能が優れているため大型の建物や橋などに使われることが多かったですが、近年では一般住宅に使用されるケースも増えています。
超高層ビルや航空宇宙産業機器に使われるほど丈夫で機能性が高いことがフッ素塗料の特徴ですが、外壁塗料の中でも最高級の価格帯です。
そのため、一般住宅に利用する場合は特に劣化しやすい屋根にフッ素塗料、外壁にはシリコン・ウレタン塗料を利用するなど場所によって使い分けられることがあります。
フッ素塗料のメリット
・耐摩耗性、耐熱性、防汚性が優れている
・外壁塗料の中で耐用年数が最長
・外観に高級感が出る
・親水性が高いため汚れが落ちやすい
フッ素は虫歯予防に利用されたりフライパンに使用されていたりと、私たちの身近な生活にも多く活用されています。
フッ素は摩擦や熱、汚れに強いため劣化を防ぎ耐用年数も長いことから航空宇宙産業機器、なかなか手入れができない高層ビルなどに塗布されることが多いです。
また、光沢感があるため見た目も美しくなるほか、親水性が高く汚れにくい、汚れても落ちやすいなどのメリットがあります。
フッ素塗料で施工した外壁は、空気中の汚染物質が付着しても雨で自然に流れ落ちます。
フッ素塗料のデメリット
・価格が高い
・ツヤありしか選択肢がない(ツヤなしが良い人には不向き)
・上塗りしにくい
・塗膜が硬く割れやすい
メリットが多く最強にも思えるフッ素塗料ですが、その分価格も高くなるのがデメリットです。
上の表で見ても、フッ素塗料はウレタン系塗料のおよそ倍の価格となるため、外壁と屋根をすべてフッ素塗料にしようと思うとかなりの高額となります。
また、塗膜の親水性の高さによりメリットを発揮するため、ツヤを消すことができません。そのため、ツヤのないマットな仕上がりを希望する人には向いていないでしょう。
そして、防汚性の高さから塗料を上塗りしにくいという点も注意が必要です。
フッ素塗料は塗膜も硬いため外壁のひび割れが発生すると塗膜も割れてしまう可能性があります。特にモルタル外壁など動きのある壁材へ塗装する場合は注意しましょう。
ここまでは、アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素と、塗料の主成分となる樹脂ごとに説明してきました。
しかし近年、上記の主成分となる合成樹脂に機能性を持つ特殊な成分を配合することでより新しい塗料の開発が進んでいます。
ここからは合成樹脂に機能性を加えた塗料について説明します。
ラジカル制御塗料
ラジカル制御塗料はアクリル樹脂系塗料やシリコン樹脂系塗料をベースに「高耐候酸化チタン」と「光安定剤」という2つの成分が配合されて作り出された塗料です。
ラジカル制御塗料は塗膜の耐候性・耐久性が高いため、「一番人気がある」と言われてきたシリコン塗装と並ぶと期待されるほど注目を集めています。
ラジカル制御塗料の「ラジカル」とは、酸素や水、紫外線などが顔料(塗料に含まれている材料)に触れることで発生する劣化因子です。ラジカルは外壁や屋根の塗膜が劣化する原因の一つとなり、塗装を行う目安にもされる「チョーキング」現象の発生にもつながります。
「粉が吹く」と表現されることもあります。
ラジカル制御塗料は名前の通り、塗膜の劣化を防ぐために「ラジカル」を「制御」することに特化した塗料です。
ラジカル制御塗料のメリット
・チョーキングが発生しにくい
・防汚性、防カビ性が高い
・光沢の持ちが良い
・さまざまな下地との相性が良く塗りやすい
・比較的安価だが高性能
チョーキング現象の発生を抑えるために開発されたラジカル制御塗料は耐久力が高く、バイオ技術により藻やカビが付きにくいことも特徴です。
親水性に優れていることから雨水による汚染を防ぎ、日当たりの良くない壁にも適しています。
また、光沢の持ちが良く「ツヤ有り」「ツヤなし」が選べる、下地を選ばないためほとんどの住宅の外壁に使える、伸びが良いためローラーで塗りやすいなど、多くのメリットがあります。
そして機能性の高さはフッ素塗料とあまり変わらない割に、価格はフッ素よりも安いことが大きな魅力。こうしたメリットからラジカル制御塗料は注目を集めています。
ラジカル制御塗料のデメリット
・濃い色を選べない場合がある
・耐用年数の実績がない
ラジカル制御塗料は「高耐候酸化チタン」を主成分とした白色顔料です。そのため製品によっては、黒などの濃い色を選べない場合があります。
ただし、濃い色の塗料は白色顔料をほとんど含まないため、そもそもチョーキング現象は発生しにくい状態です。
外壁を重厚感のあるカラーにしたい方は、ラジカル塗料にこだわらなくても良いと言えるでしょう。
また、ラジカル制御塗料は発売から6年程しか経っていないため知名度が低く、積極的に取り扱っている業者が多くありません。耐用年数は長くて15年ほどと言われているものの、その制度を確かめるまでに至っていないのです。
メリットが多い一方で、新しい塗料のために実績がない点もデメリットと言えます。
光触媒塗料
光触媒塗料は、太陽光に反応して外壁に付着した汚れを分解する「セルフクリーニング」効果を持っています。
塗料に含まれる酸化チタンという物質が紫外線に反応し活性酸素を発生、活性酸素は空気中の大気物質を分解する働きがあるため壁面に汚れが蓄積しづらくなるのが特徴です。
また、光触媒塗料は親水性も高いことから雨水がくっつきやすいことも特徴の一つ。
活性酸素で分解された汚れが親水性と膜に浮かび上がり、雨で洗い流されるため、自分で外壁を掃除しなくてもきれいな状態を維持できます。
光触媒塗料のメリット
・セルフクリーニング効果がある
・耐久性が高い
・空気清浄効果がある
光触媒塗料にはセルフクリーニング効果のほか、耐久性が高いメリットもあります。外壁の汚れが少ないと劣化速度も遅くなるため、結果として耐久性の向上につながるのです。
光触媒塗料の耐用年数は15〜20年程度と言われていますが、ラジカル制御塗料と同様に販売開始から年数が浅いため、まだ実証結果が多くない実情もあります。
また、空気の清浄効果もあることから、光触媒塗料は環境に優しい塗料とも言えます。
光触媒塗料のデメリット
・初期費用が高くなる
・カラーバリエーションが少ない
・光触媒塗料の効果が得られないケースもある
・塗膜がひび割れしやすい
・落とせない汚れもある
・屋根用の光触媒塗料がない
光触媒塗料のセルフクリーニング効果を発揮するのは「酸化チタン」です。この酸化チタンの色が白いため、黒などの濃い色はあまり選べません。
また、セルフクリーニング効果は太陽光や雨に当たる場所で発揮されるため、日当たりの悪い面や雨に触れない場所では汚れを落とすことができない点も注意が必要です。
光触媒塗料で落とせる汚れは大気物質に含まれる汚れです。鳥のフン、土埃、サビなどの汚れは落とせないため「光触媒塗料=壁が汚れない」という認識を持たないようにしましょう。
そして、太陽と雨に触れる場所で効果を発揮する光触媒塗料は屋根に最適と思う方も多くいますが、屋根用の塗料はまだ発売されていません。
外壁の塗料と屋根の塗料を分ける必要があり、耐久年数が違うとメンテナンス時期にズレが生じます。屋根と外壁の塗装工事を別々に行うと費用の総額も高くなってしまうため、外壁に光触媒塗装を行う場合は屋根の塗装も耐久年数の長いものを選ぶと良いでしょう。
無機塗料
これまで説明したアクリル・ウレタン・シリコン・フッ素などの樹脂を主成分とした塗料は「有機塗料」と呼ばれており、塗膜の基本性能は樹脂によって大きく左右され色あせやチョーキングなどの要因にもなっています。
一方で無機塗料は鉱物やレンガ、ガラスなどの無機物(炭素を含まないもの)を配合して作られた塗料です。一般的にはセラミックやケイ素などの無機物を主成分とした塗料のことを言います。
無機物は紫外線で劣化しないため、無機物単体であれば半永久的に状態を持続できます。
しかし塗料においては無機物だけで作ることができないため、有機物と混ぜて作りつつ無機物の耐久性を生かしたものが無機塗料です。
無機塗料のメリット
・耐候性が高い
・カビや苔が発生しにくい
・汚れにくい(低汚染性)
・火事のときにも燃えにくい
無機塗料の主成分は無機物であるため、雨や紫外線の影響を受けにくく劣化しにくいのが特徴です。外壁表面を長期間にわたって保護し、耐候性の高さはフッ素を超えるほどとも言われています。
また親水性が高いため表面に付着した汚れを浮かせ、雨水で洗い流すこともできます。さらに静電気が発生しづらいためホコリなどのゴミを寄せ付けず、きれいな状態を維持できるのもメリットです。
そして鉱物やレンガ、ガラスなどの無機物を含む塗装であるため、火事の際にも燃えにくいのも安心でしょう。
無機塗料のデメリット
・ひび割れしやすい
・高価
・再塗装ができない場合がある
・仕上がりが職人の腕に左右されやすい
無機塗料は固い塗膜となるため、外壁の表面がひび割れした場合に塗膜も一緒にひび割れを起こしてしまう可能性があります。そのため、ひび割れしやすい外壁には不向きな塗料ですが、弾性力が高い無機塗料もあるので、ひび割れが気になる方でも対応可能です。
また、無機塗料は汚れが付着しにくい一方で、上から新しく塗装を行うときには塗膜が密着しづらく早期に剥がれてしまうこともあります。さらに無機塗料の強みである耐候性を発揮させるためには一定の厚みで塗布する技術も必要です。そのため外壁塗装に無機塗料を検討している場合は、施工実績の豊富な熟練の職人に依頼できる業者を選びましょう。
セラミック塗料(遮熱・断熱)
セラミック塗料は正式には「セラミック配合塗料」を呼ばれ、セラミックとはガラスやコンクリート、セメントなどの無機個体材料(陶磁器)全般の総称です。
セラミック塗料は大小さまざまな粒の砂や砂利が配合されていますが、これらは微粒子になったパウダー状のセラミック、砂状のセラミック、天然石を砕いたもの、人工的に着色したものなどを組み合わせて配合する場合もあります。
セラミック塗料は意匠性が高く、汚れにくいのが特徴で石材調の仕上がりにも使われます。
セラミック塗料のメリット
・汚れがつきにくい
・熱を伝えにくい
・デザイン性が高い
・耐久性が高い
セラミック塗料は親水性が高いため、雨で汚れを洗い落とす力が強いのが特徴です。またセラミックの粒子の空洞が熱せられることで真空となります。真空は熱を通さないため遮熱・断熱性が高くなります。
そしてセラミック塗料の最大のメリットがデザイン性の高さです。例えば天然石や砂岩など、好みによって色味や雰囲気を選択できます。カラーも単調なものだけでなく、奥行きや立体感を出すカラーセラミックスというシリーズの塗料もあるため外壁の見た目にこだわりたい人におすすめです。
セラミック塗料のデメリット
・ひび割れしやすい
・濃い色が出せない
・塗りづらい
セラミックは塗膜が固いためひび割れしやすいのがデメリットです。また、セラミックの結晶が白色のため、濃い色がつくれず淡い色に限定されます。
そして、セラミック塗料の特徴を発揮させるには職人の高い技術力も必要です。セラミック塗料は通常の塗料とは塗り方や注意点が異なり、扱い慣れていない人が塗るとムラが発生してしまう可能性があります。
外壁塗装でセラミック塗料を選択する際は、熟練の職人や業者に依頼しましょう。
ナノテク塗料
ナノテク塗料はナノレベルの超微粒子で構成され塗料の樹脂量を最小限まで低減させた水性塗料です。ナノテクノロジーを駆使した最新技術によって生み出され、ガラスのような滑らかな塗膜のため汚れが侵入しにくく落ちやすいのが特徴。
ナノテク塗料は地球温暖化対策としてCO2の削減を目指して開発されました。可能な限り石油系樹脂の使用を削減し水性塗料の半分しか含んでおらず、油性塗料と比べる石油系樹脂の含有量はわずか5分の1と言われています。
またシックハウスの原因となる化学物質の含有量が少ないため、ホルムアルデヒドの発生を最低限におさえてくれることも大きな特徴です。
ナノテク塗料のメリット
・セルフクリーニング効果
・シックハウス対策
・速乾性がある
・カビ・苔が生えにくい
・燃えにくい
ナノテク塗料は親水性が高いためセルフクリーニング効果も期待できるほか、微粒子と石油系樹脂が均一に結合することで強力な塗膜を形成するため、汚れにきわめて強いのが特徴です。
またホルムアルデヒドの発生の原因となる化学物質の排出も抑えられるためシックハウス症候群の対策にも良いでしょう。
雨や紫外線などに非常に強い耐性を持つため耐久性が高く変色しづらい塗料です。
ナノテク塗料のデメリット
・実績が少ない
・取り扱える業者・職人が少ない
ナノテク塗料は販売されてから間もなく開発途上にある次世代塗料の一つです。そのため一般的な塗料に比べ費用が高くなるほか、耐久性についても実証段階にあると言えます。
また塗料の効果を100%発揮させるためには正しい方法で行わなければならず、取り扱いに慣れている業者・職人がまだ少ないこともデメリットに挙げられます。
外壁塗装における塗料の選び方
ここまで解説してきた通り、塗料は種類によってさまざまな特徴やメリット・デメリットがあることがわかります。
実際に自分の家の外壁をリフォームする際には、どのようなポイントを意識して塗料を決めれば良いのでしょうか。
まずはどの部分を塗装するか範囲やおおよその予算を考えた上で、欲しい機能や色、ツヤの有無、グレードなどの条件を決めていきましょう。
すべての希望を満たす塗料を選定するのはなかなか難しいかもしれませんが、例えば以下の項目で自身の希望を洗い出し、優先順位をつけてみてはいかがでしょうか。
項目 | 例 |
追加機能 | 遮熱・断熱・防水・無機・セルフクリーニング効果など |
カラー | 白・黒・ブラウンなど/エナメル・クリヤー |
ツヤ | ツヤあり・ツヤ消し |
グレード | アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素 |
溶剤の種類 | 水性・油性 |
弾性 | 硬化塗料・微弾性塗料・弾性塗料 |
また、塗装業者に依頼する場合は複数の業者に連絡し相見積もりをもらいましょう。
その際、業者ごとの違いを明確にするために、必ず同じ条件で依頼することが重要です。
塗料はさまざまなタイプ・グレードがあるため外壁塗装のプロに相談するのがおすすめ
外壁の塗料はグレードや種類、弾性、色などの組み合わせでさまざまな種類があり、希望の条件に合うベストな塗料を選定することは非常に困難です。
また、外壁リフォームは足場を組む必要があるため大きな金額が動くことになります。後から後悔しないためにも塗装業者に相談しプロのアドバイスをもらうのが良いでしょう。
悪徳業者に引っかからないためにも必ず複数の業者に相見積もりを依頼し、しっかりと選別することも大切です。